ゲーム機は"IBM Inside"?
wiiはお茶の間エンターテインメントを変えるか(2)

wiiはお茶の間エンターテインメントを変えるか(1)

私は殆どゲームをやらないのだが、任天堂のwiiはすごいと思った。岩田社長のプレゼンも素晴らしい。話術や資料の巧みさや、テキスト/動画を両方公開するところ、YouTubeにCMをアップするところ等、マーケティング手法としてもとても勉強になったが、それはあくまで副次的な要素で。

やはり、コントローラー自体を振り回して操作するという斬新なUI、それを「リモコン」と呼ぶ発想、「チャンネル」という概念とあの画面設計、「これをゲームという枠組みだけで考えてよいのだろうか?」と思うのは私だけではないはずだ。そんなわけで、ET研の復習も兼ねて、wiiの可能性やビジネスオポチュニティについて考えてみたい。

●ゲーム業界の現状

なんだか色々な可能性を感じるのだが、まずは何と言っても気になるのはゲーム業界に与えるインパクトである。

ゲーム業界全体の規模は、CESA (Computer Entertainment Suppliers' Association)の調査によると、2005年のゲーム総出荷額はハード/ソフト合わせて1兆3,598億円、うちハードウェアが8,727億円、 ソフトウェアが4,871億円となっており、主に携帯型端末の投入が成長要因であったとされている。

市場シェアについてだが、SONYのゲーム事業部門の売上高が1兆円弱、任天堂が5,000億円前後であり、北米でのPS2のシェアが60%~70%という記事を複数見たので、現在の(=wii登場前の)任天堂のシェアは3割前後なのではないか。

但し、ゲーム市場自体は飽和気味だとも言われる。これまでは、5年スパンぐらいで新しいハードが出て、それに伴ってソフトも進化し景気を促進してきたため、新しいコンソールが出る前は「買い控え」が起こるのが一般的だったようだ。(この構図は、MicrosoftがPC市場でやってきたことと同じように見える。つまり、ゲーム市場のプラットフォームリーダーはハードベンダーということなのだろう。)2006年に入ってから、特に北米では、古いコンソールの価格が下がったこともあり、PS2の人気が高く、買い控えが起こらないという事象が見られている(参考:Older Consoles Lift Game Publishers - WSJ.com)。確かに、任天堂やSONYのゲーム部門の売上高の推移を見ると、ここ10年ぐらいのスパンでゲームの市場は一旦停滞している。岩田社長のプレゼンでも、市場の飽和については指摘されている。 

もう一つ、ゲーム市場を考える際に重要なファクターだと思うのは、(他のコンテンツ産業と異なり、)ゲームは、圧倒的に輸出が強い産業であるという点だ。CESAの調査では、日本のゲームは、ハードウェアの81%、ソフトウェアの52%が海外市場向けであったと報告されている。それと、特にソフトに関して他のコンテンツ産業と比較したデータが平成18年度情報通信白書にあったので載せておく。(単位は億円)

また、任天堂のハード/ソフトの出荷ユニット数から見ても、ハードが76%、ソフトは79%が海外市場となっており、ゲーム会社の経営がグローバル化していることが伺える。(ちなみに、売上の3割が日本、残り7割が海外という構図はSONYやトヨタもほぼ同じである。)

●wiiが戦うのは他のゲーム機なのか?

wiiは「毎日ユーザーが電源を入れたくなる」「家族の皆が使う」サービスを目指すと謳っている。

ところで、そもそも、日本人はどれくらいゲームをするものなのだろうか。消費者の行動を示す幾つかのデータから読み解くと、

では、ゲームをしない人は、なぜゲームをしないのか。「ゲームをしない、しなくなった理由」は、「他にやりたいことや欲しいものがある」、「ゲームに対して興味・関心がない」、「ゲームをする時間がない」(以上、出典:CESA2006一般生活者調査)となっている。

  • 日本人のコンテンツ関連の年間支出(家庭当たり)は9万959円(2005年)だが、ゲームが占める割合はわずか3%に過ぎない。また、ゲームに対する支出は2000年をピークに減少傾向にある。
  • 生活時間で見ると、日本人の3次活動(睡眠・食事など生理的に必要な活動や、仕事や家事など義務的な活動を除いた、いわゆる「自由に使える時間」)は平均6時間26分。このうち、テレビや新聞等の受動的なメディアや休養に費やす時間は3時間53分、学習や趣味といった積極的に過ごす時間は1時間13分。

ここから推察すると、ゲームをする人はするが、しない人の方が多数派であり、また、ゲームソフトに対する支出も額は限定されているため、広い意味では、家庭当たり年間9万円の予算と、1人当たり一日6時間半の自由時間(タイムシェア)を巡る戦いである という言い方もできるかもしれない。そう考えると、これはゲームに限らず、インターネットサービスやその他の娯楽も含めての競争なのだが。

・・・ホントは、この後、任天堂の強みや狙い、ゲーム業界のバリューチェーンについて書こうと思っていたのだが、長くなったのでその辺りは次回へ続く。(思わせぶりですいません。。。)

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