シリコンバレー・エグゼクティブの給料事情と日本のコーポレートガバナンス
近況報告(7月上旬)

Appleの描く世界観

昨日、AppleのWWDC (World Wide Developers Conference) でのSteve Jobsの基調講演に行ってきました。

今回の発表は、最近のAchievementや、サードパーティの面白いアプリケーション、新しいディスプレイ(最大30インチ!!)、そして次期OS "Tiger"の新機能デモ、というのが主な内容でした。

参加した感想ですが、

やっぱり実物は凄かった

です。

聞きしに勝るSteve Jobsのカリスマと、Appleが描く世界観、そしてそれに共感・支持する人々のコミュニティの熱を感じました。いまはApple本社の近くに住んでいるにも関わらず、私はMacユーザではないので「近くて遠い会社」だったわけですが、

これまでMacを使っていなかった自分は、ちょっと人生損してるんじゃないか?

と感じさせられたほどです。まさにJobs マジックに掛けられた気分でした。それでも、よく知る人に言わせれば、昨日は、ラストの決めに来る目玉がなかったので、ややプレゼン自体は本調子ではなかったらしく、あれでイマイチだとすると、乗りに乗った時は、さぞかしすごいのでしょう。

ちなみに、私が講演に参加するに当たって、頭に置いていたポイントは以下でした。


  1. Appleは、何をコアコンピタンスにし、何を/どう外部へ切り分け、パートナー/ディベロッパーと付き合うのか(IT業界でのオープン・アーキテクチャ化、モジュール化の動きをどう捉えているか)
  2. どのような差別化戦略を取って行くのか(デスクトップPCのOSはMicrosoftの寡占市場のため、AppleがMicrosoftと戦うためには真正面からでの勝負は難しいと思われるため)
  3. Tigerの目玉は何か(Longhornは「セキュリティ」「サーチ」だが、Appleはどこに目を付けたのか)
  4. どこを儲けどころにするのか(付加価値の源は何なのか)

以下、これらのポイントについて私が講演を聞いて受けた印象から述べます。

Apple製品について、私が一貫して受けた印象は、

絶対に必要・ないと困るというものではないが、生活の中で「あぁ、こういう風にこれを使ったら、楽しいだろうなぁ、素敵だろうなぁ」と、より良い、スタイリッシュなライフスタイルを提案する

というものでした。

Airport Expressを使って、Mac経由で各部屋にあるステレオに対して音楽を配信する、写真をオンラインに載せたり、スライドショーを作ったり、それをDVDに焼いたり、自宅をスタジオにして楽器演奏を楽しんだり、というエンターテインメント系の訴求力や、自分が実際にMacを使って仕事をするこういうシチュエーションで、この機能をこう使う、というように、とにかく、ユーザが実際に製品を使う場面のストーリー作りが抜群にうまいと思いました。

インターフェースが洒落ているのももう一つの特徴です。今回発表されたTiger新機能の中には、ファイルのメタデータを元にローカルディスクを検索する機能Spotlightも含まれていましたが、選択された箇所が、ポワンと、それこそスポットライトを浴びているかのようにハイライトされます。iChatでは、同一ウィンドウ内で複数人と同時にヴィデオカンファレンスが可能になるそうですが、単に画面を分割するのではなく、合わせ鏡のように角度を付けてそれぞれの人を表示したり、しかも、鏡のように、下にそれぞれのヴィデオが反射して写っているところなど、とってもお洒落で感心しました。

そして、そういう遊び心に共感し、喜べる人が、Macユーザとしてこの会社を支えているのだろう、ということが、会場から湧き上がる歓声・拍手などのリアクションからも伺えました。iPodユーザが街中で出会うと、お互いのイヤホンをお互いのiPodに差し込んで、相手の音楽を聴く、などというエピソードも、Appleの描く世界観、ライフスタイルに対して共感するもの同士の連帯感から生じるものだと思うので。

価格ではなく感性に対する訴求力と、それに共鳴する人々(顧客、従業員、デベロッパー)の高いロイヤルティ

という特徴を、Appleという会社から感じました。

また、こういった一貫性を生み出すにあたってのSteve Jobsの手腕は大きいのだろうなとも思いました。

噂には聞いていましたが、「顧客であるあなたが、Macを使ってこういうことをするときに…」という説明・デモを自分で行うので、ストーリーが非常に一貫していて、「これがAppleが提案する世界」というのが明快です。しかも、説明もデモも非常にスムーズなので、いかに彼が真剣にMacを使いこなそうとしているか、よく理解しているか、その熱意は、顧客にも、彼の部下にも、ダイレクトに響くに違いありません。現役並びに元Appleの社員の方々からは、Steve Jobsがいかに人をやる気にさせるのがうまいか、という話をよく聞きますが、これもその一つだと思いました。

会場に満ちていた熱っぽい空気を共有したからか、今日はいつもに比べてやや興奮気味のレポートになりましたが、それだけシリコンバレーの超一流のCEOのカリスマはすごかった、ということでご容赦を。理屈を超えて人を動かすもの、が伝われば良いなと思い、取り急ぎ報告します。発表内容そのものは、おそらく、日米の多数のプレスが発表すると思うので、自分のためのメモを次のエントリにしようかと思っています。

最近、仕事やボランティアなど諸々で少し疲れていたこともあって、あんまりBlogも更新できてなかったのですが、超一流のカリスマのお蔭で少しパワーを回復しました(笑) まだまだ未熟者ゆえ、悩み多きお年頃ですが、これからも、見たもの・聞いたもの・考えたものを自分の成長記録として残して行くつもりです。

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